BIKER JACKET / K-101

こんにちは。
2023年、今年から少しブログ的なのも書いてみようと思います。
1回目の今回は、KLOOTCHを立ち上げて最初に作った型、BIKER JACKETについてまとめてみようと思います。
が、長くなると思いますので、お時間ある時にでも読んでみてください。
 
BIKER JACKETは英国発祥のダブルブレストライダースが元。
デザインはシンプルで、構築に必要な縫い目以外は入っていません。
ポケットは腰左右、左胸、お腹部分、袖と5つ付いています。
左右非対称のジャケットですが、左胸のポケットはフロントジップと左右対称に付いています。
 
革は基本的にパーツを細かくすればするほど取り都合が良くなるのでコストが下がります。
このジャケットは構築に必要な縫い目以外ないので、一つ一つのパーツが大きく取られてて、特に背中と左前のパーツはかなり大きいので取るのが大変です。
革は自然由来の素材なので当然同じ形のものはないし、生体の時についた傷やシボ、血筋などもあります。
それらを極力避けて裁断するにはパーツは細かい方が取りやすいのです。
量産の革ジャン等で無駄に縫い目が入っているのは、大抵はコストを下げるために入っている縫い目。背中心や内袖に縫い目が入っているのはだいたいそうだと思います。
でもそれもまぁしょうがない事で、革は綺麗なものだけを買うとか、選んで買うとかが難しいので、裁断しようと革を広げて全然パーツが取れないこともあります。
傷を隠すための加工がされた革もたくさん種類があるのですが、それだと本来の革らしさがなくなってて、うちは傷等を隠す加工がされていない革を使用しています。
革の形や傷を考慮して大きいパーツを裁断すると、何度もパターンを配置しなおして気付くと一日経ってたこともありますwパーツを細かくして裁断して縫製した方が全然早いですw
それだけ大きなパーツを取るのは大変なのです。
 
少し形の話をすると、襟は立体的に綺麗に折り返すように、表襟は2つのパーツ、裏襟は3つのパーツで構成されています。
各縫い目にダーツ(体に沿うように布を立体的に仕立てるための技法)を入れ、表襟を裏襟より少し大きめに作ることで、襟単体でも自然に綺麗に折り返すように作図しています。
また、英国タイプのライダースは、裏襟が切りっぱなしになっていることが多いのですが、うちでは切りっぱなしにはしません。切りっぱなしの方が楽だし早いのですが、見た目が良くない。なのでうちでは折り返して断面が見えないようにしています。襟先は英国タイプらしく綺麗に尖らせています。
 
袖はテーラードジャケットに近い形で作図し袖付しています。
テーラードのように袖にイセ込み(長さの違う生地同士を合わせて縫い、立体的にしあげる技法)を入れています。
イセ込みはスーツに使われる技法で、見た目を美しくして、可動域を広げる効果があります。スーツ等の生地とは違い、革はイセ込みが難しくて、これもまためんどくさいですw
袖の形は少し前に振っていて、楽に着られるように作図しています。
 
英国タイプのライダースは、前傾姿勢でバイクに乗るように作られているので、前見頃が狭く作られていることが多いのですが、うちは特に狭くしていません。前見頃が狭いライダースのフロントジップを閉めると、腕が窮屈で、それが嫌で狭くしていません。
 
脇腹と腰部分にダーツを入れて、体のラインに綺麗に沿うようにしています。
 
縫製方法もこだわりがあって、革は布帛と違って一度開けた針穴は二度と塞がりません。また、針穴に弱く細かいミシン目や大きい針穴はしばらくするとそこから避けてしまいます。
普通本縫いする時は返し縫い(縫い初めと縫い終わりにミシンを逆回転させて二重に縫いほつれを防止する技法)するのですが、ミシンによる返し縫いは針穴がズレて余計な針穴ができたり、針穴が広がってしまったり、良いことがありません。
なのでうちでは革に関する部分は全て返し縫いはせずに、一箇所一箇所手作業でほつれないように処理しています。テーラーで修行した際に習得した技法なのですが、返し縫いに比べて何十倍も手間と時間がかかります。それでもそれが革には一番良いですし、糸が重ならないので見た目も美しく仕上がります。
このジャケットには二箇所だけ返し縫いをした方がいい箇所があり、そこに関してもミシンでは返し縫いせず、手縫で一針づつ解けないように処理しながら返しています。それにより見た目も美しく丈夫に仕上がります。
 
縫い目にも工夫していて、普通縫い代を片返し(縫い合わせた両方の縫い代を片方に倒して処理する技法)にすると、折り返した時に段差になり、見た目が綺麗ではありません。なので、うちではフラットになるように処理して見た目の美しさを作っています。
 
他にも色々と手間と時間をかけて工夫して仕上がっているのがこちらのジャケットです。
2023年1月現在は茶芯のホース、カウ、ヌバックの3種類で、これからシープとゴートも追加しようと思っています。
ホースがもしかすると無くなるかもしれません。
BIKER JACKET以外のジャケットや革についてはまた今度書こうと思います。